日日のうた「明星と意気地なし」

「月が綺麗ですね」といざ言えないから
あの明星を指さし「金星だ」と君にほほえむ

月が綺麗な夜、
「月が綺麗ですね」と君に伝えたい。
まっすぐな常套句を言えない僕が君に好意を伝えるために。

君が「死んでもいいわ」と微笑む奥側の確信を見たい。
僕が伝えるときに自然と出てしまう震える心と同じ種類のものを。

月が綺麗な夜、
君にLINEをする。
雑談の合間に「今夜は月が綺麗だね。居待月と言うらしいよ」と月の話題を混ぜる。
星の話もしたりして、
天体に興味があるふりをして。
本当は少しでも意識してくれたらと淡い期待を抱いて。

月が綺麗な夜、
君と僕は2人だけ。
僕は話をしながらたまに空を見上げる。

月が綺麗だ。
月が、綺麗なんだ。

黒く澄んだ夜空に輝く星座たち。
月のそばで浮かぶ金星。
外は少し肌寒い。
月のほうへ指をさす。
鼓動と共に揺れる声を出す。

「金星だ」と。
意気地なしな僕は不器用にほほえむ。

少しいたずらに君がほほえむ。
「月は綺麗？」と。